競売物件は本当にチャンスか
不動産運用について書かれている本の中には「競売物件で掘り出し物物件を激安価格で購入する」ということを指南しているものもあります。
競売物件とはもともとは買主が住宅ローンを組んで自宅用などに購入していた物件なのですが、返済途中で完済が難しくなる状況が生じてしまったために銀行などローンの貸主が裁判所を通して差し押さえをして売りに出したというものです。
競売物件は公報などに情報が出されるのですが、このときの販売価格はほとんどの場合で市場購入価格の半額~6割くらいです。
競売をするときには所定の入札希望の用紙を取り寄せそこに自分の希望価格を記載して提出します。
入札した金額が他の希望者の中でも最も高ければその人が新たな飼い主として期限までに支払いをし物件の所有者の身分を手に入れることができます。
うまくいけば比較的新しく資産価値の高い物件を格安価格で手に入れることができるのですが、競売物件自体が通常の売買方法ではなくある意味いわくのついた方法となっているため、完全にスムーズに取引を完了するというのは難しいのが現状です。
そもそもなぜ落札価格が安いのかを考える
裁判所競売が行われるのは、支払いが難しくなった住宅ローンの残金を物件を売却することで発生する金額で埋め合わせるためです。
だとすれば極端な安売りなどせずに、できるだけ高く販売した方がずっとお得なはずです。
それがなされないのは普通の売買価格と同じように販売してしまっては、その物件購入にかかるコストに見合わないものになってしまう可能性があるからです。
というのも競売物件の場合には競売にかけられている時点でもまだ元の持ち主が住んでいるということもあり、室内の設備や汚損状況もまちまちとなっていたりします。
誰しも滞納をしたくてしているわけではありませんから、そこで取り立てに来る金融機関や差し押さえをする裁判所に恨みを持っている債務者もいるわけです。
実際の競売物件の写真を見ればわかるように、通常の不動産物件と違って明らかに人が住んでいるであろう生活感のある室内の様子や外観がそのまま掲載されていることもよくあります。
これは競売手続きのために訪れる人は必ずしも中に住んでいる人の了承を得て撮影をしているわけではないためで、そんな室内の状況が競売終了までにきれいにされている可能性は極めて低くなります。
また住宅そのもの周辺にあって元の持ち主が利用していたような駐車場代や管理費、修繕積立金といったものの滞納分は、新たな持ち主がかわってまとめて返済をしなければいけません。
ですので仮に競売によって安く物件を手に入れることができてもその後の室内の設備改善や返済金、前の持ち主との折衝といった手間により普通に売買物件にしておいた方がお得だったという事態もあります。
競売物件というのはただ安いだけの不動産物件ではないということはしっかりと理解しておく必要があります。